オープンカントリー A/T III は、本格4WDやSUVの“走破力を最大化する”ことをテーマに開発されたA/Tタイヤだ。
悪路でのトラクション・耐久性・カット耐性を高めながら、オンロードの直進安定と快適性も追求。
泥・砂利・雪の場面でグリップを発揮しつつ、街乗りの扱いやすさも落とさない設計が特徴だ。
この名鑑では、A/T III の構造思想・性能傾向・他社比較を体系的にまとめ、“どんなユーザーに最適か”を明確にしていく。
※ A/T(オールテレーン)は“オールシーズン”とは別ジャンル。悪路対応と耐久性を高めたタイヤで、舗装路特化モデルとは性格が大きく違う。
基本スペック|オープンカントリー A/T III の概要

- 発売年:2020年
- パターンタイプ:オールテレーン(Aggressive A/Tパターン+ストーンエジェクター搭載)
- 速度記号・ロードインデックス:例)265/70R17 115T
- 適合車種:本格4WD・SUV(ランドクルーザー/プラド/ハイラックス/ラングラー/デリカD:5 など)
簡易性能チャート|構造とコンパウンド特性から見る性能傾向

- ドライ:ワイドリブと剛性の高いショルダーで、A/Tとしては応答が素直。重量級4WDでも安定して走れる。
- ウェット:シリカ強化コンパウンドで雨の制動が安定。A/T特有の“ブロック倒れ”が出にくい設計。
- 静粛性:A/Tとしては抑えられているが、パターンノイズは一定レベルで入る。快適性より走破性重視の性格。
- 乗り心地:剛性感はしっかりしていて硬めだが、トーヨーらしい“突き上げの丸さ”があって扱いやすい。
- 雪:3PMSF対応で、圧雪・軽い積雪は強い。ブロック配置が雪をしっかり噛むタイプ。
- 寿命:耐カット性と摩耗耐久が高く、オフロード走行が多くても減りにくいロングライフ設計。
※ このチャートはメーカーの公式値ではなく、トレッド構造とコンパウンド特性から導いた専門的な傾向評価だ。
公式データ|A/T IIIのメーカー公表スペック

- 3PMSF:対応(冬の軽雪性能を公式に認証)
- M+S:対応(Mud & Snow)
- パターン構造:非対称A/Tパターン、ストーンエジェクター、段違いブロック配置
- コンパウンド:耐カット性重視の高強度ポリマー+シリカコンパウンド採用
- 発売年:2020年(グローバル展開)
開発ストーリー|“悪路で踏み切れるA/Tを、街でも扱いやすく”というテーマで進化したモデル

オープンカントリー A/T III は、「オフロード性能を強化しながら、オンロードの扱いやすさを落とさない」という相反するテーマを両立させるために開発された。
A/Tの弱点である“ブロック倒れによる応答遅れ”を抑えるため、ショルダー剛性とリブ構造を再設計。
さらに、石噛みを防ぐストーンエジェクターや、耐カット性を高めた新コンパウンドを採用することで、泥・砂利・雪といった悪路での走破力を大幅に底上げした。
そのうえで街乗りの振動とノイズを極力抑え、毎日乗る4WDでも扱いやすいバランスに仕上げた、オープンカントリーシリーズの“新世代A/T”といえる存在だ。
他社比較|コンフォート系・バランス系・走破系で見るA/T IIIの立ち位置

A/Tタイヤは“どの路面性能を軸にするか”で性格が大きく分かれる。
A/T IIIはオン・オフ両立型のバランス寄り。その立ち位置を3つの抽象カテゴリで整理する。
① コンフォート寄りA/T(例:ファルケン ワイルドピーク A/T TRAIL)
街乗りの静粛性・乗り心地を優先したタイプ。舗装路中心のユーザー向けで、ノイズと振動が少ない。
A/T IIIはこれより悪路性能が強く、オフの走破力で明確に差がつく。
② バランス型A/T(=A/T IIIのポジション)
オンロード安定性・悪路性能・軽雪対応をバランス良くまとめたカテゴリー。
A/T IIIは“街で扱いやすいA/T”をテーマにしながら、石噛み対策や耐カット性も強化されており、普段使いと週末のアウトドアを両立するタイプに向く。
③ 走破系A/T(例:BFグッドリッチ トレールテレーン)
悪路でのトラクション・耐久性・ショルダー強度を優先したカテゴリー。走破性は高いが硬く重いモデルが多い。
A/T IIIはここまでの“ゴリゴリの走破特化”ではなく、オンロード性能を落とさずに悪路性能を上げたタイプだ。
※ この比較はタイヤの構造とコンセプトに基づく“方向性の違い”を整理したもので、絶対的な優劣を示すものではない。
メリット・デメリット|A/T IIIの変わらない特徴

メリット
- 悪路でのトラクションが強い。段違いブロックとストーンエジェクターで、泥・砂利・岩場で噛みつきがいい。
- オンロードが扱いやすい。A/T特有の“ブロック倒れ”を抑えた設計で、街中でもステアが素直に入る。
- 耐カット性が高い。強化コンパウンドとショルダー構造で、アウトドア走行でも傷が入りにくい。
- 軽雪に強い。3PMSF取得で、圧雪・凍りかけの路面にも対応できるA/Tとしての強さがある。
- 寿命が長い。摩耗耐久が高いので、重量級4WDでも減りが遅め。
デメリット
- パターンノイズは入る。静粛性特化モデルより音は出やすく、舗装路ではA/Tらしさが出る。
- 乗り心地は硬め。悪路での耐久と剛性を優先しているため、突き上げは一定ある。
- 高速燃費は落ちやすい。重量&ブロック抵抗の関係で、HTタイヤより燃費は不利。
サイズ展開|主要な流通サイズを厳選して掲載

- 265/70R17
- 275/70R17
- 265/65R18
- 275/65R18
- 285/70R17
- 285/65R18
- LT265/70R17
- LT285/75R16
※ ここでは流通量が多い主要サイズだけを抜粋している。全サイズ一覧ではなく、代表的なラインナップをまとめた形だ。
車種別適合|主要SUV・4WDの代表純正サイズで整理

※ グレードで純正サイズが違うことがあるけど、ここでは代表的な純正サイズを基準にまとめている。
本格4WD
- トヨタ ランドクルーザー(265/65R18)
- トヨタ ランドクルーザープラド(265/65R17)
- トヨタ ハイラックス(265/65R17)
- ジープ ラングラー(255/70R18)
SUV・クロスオーバー
- 三菱 デリカD:5(225/55R18)
- 日産 エクストレイル(255/55R19 ※カスタムサイズ)
- スバル フォレスター(225/60R17 ※カスタムサイズ)
ライトトラック(LTサイズ対応車)
- トヨタ タンドラ(LT275/65R18)
- フォード F-150(LT275/65R18)
- シボレー シルバラード(LT265/70R17)
まとめ|オープンカントリー A/T III が向いているユーザー

オープンカントリー A/T III は、「街乗りも行くけど、週末はガッツリ悪路を走りたい」ユーザーに最適の一本だ。
A/Tの走破力をしっかり持ちながら、オンロードの扱いやすさもキープしているので、デイリー兼アウトドア仕様の4WD・SUVと相性が抜群。
静粛性より“タフさ・グリップ・安心して踏めるフィーリング”を求めるタイプに向いている。
関連記事|A/T・SUVユーザーに役立つ記事を厳選
A/T IIIの性能理解や、4WD・SUVで選ぶ際の比較に役立つ記事を厳選した。
性能の方向性がわかりやすいラインナップになっている。
- 【実走テスト】ジオランダー CV G058の雪道性能を徹底検証
A/Tよりオンロード寄りの“バランス型”をチェックしたい人にぴったりの比較軸になる。 - ナンカン A/T・オールシーズン系レビューまとめ
タフ系のアジアンモデルを知りたい人向け。価格で選ぶ人の比較判断材料に最適。 - トーヨー セルシアス|軽雪対応の全天候モデルを深掘り
A/Tとはキャラが違うが“冬対応の方向性”を理解するのに役立つ比較対象。 - 【地域別】積雪少なめ地域に強いオールシーズン特集
オンロード目線で冬対応を見たい読者に向く。A/Tの冬性能との対比に有効。 - 【名鑑】トーヨー OBSERVE GIZ2
同じトーヨーの“冬特化系”として対照的なモデル。冬道性能の違いがわかりやすい。



